いてもたってもいられず

走ってきました

2016.09.03 神谷浩史 LIVE "THEATER"感想

シアター(映画館)というコンセプトから、ひとつのスクリーンで様々なジャンルの映画が流れていく、言うならば単館系のシアターを想像していた。しかしいざ始まってみると、おもちゃ箱をひっくり返したような、ごちゃまぜで雑然としているが、ひとつひとつはキラキラと輝いている、そんなライブだった。神谷さん自身が言っていたようにまさにシネマコンプレックスだ。

1曲目はFiction Factorだろうと意気込んでいたが、まさかのDolce misto。そしてeverlasting~Saba~シリカゲルと続く。映画で言うと前回までのあらすじといったところだろうか。4曲終えてから、神谷支配人の前口上。前日にルーヴルNo.9へ行ったのだが、それに似た声で、「この芝居声が!今この場で!発せられている…!!」と嬉しさに震えた。あ、そうそう最初っから生バンドで私は飛び上がるほど喜んだ。しかし次曲のFiction Factorはまさかのバンドお休みタイムで床に突っ伏しそうになった。いや確かに、音源は打ち込みだと分かっていたが、再現可能だと思ったんだ…。が、そんな気持ちも一瞬の出来事、レーザーが打ちまくりの演出に興奮した。特に大サビの「フィクション定義が~」は暗めの照明で、「だけど心が~」からぱあっと明るくなりカラフルなレーザーが飛び交ったのがイメージ通り期待以上で最高だった。きびきび踊る神谷さんもかっこよく、総合的に完成されていた。ミラーワールドではダンサーさんが鏡を持って取り囲んだ。普段観ることのない踊る神谷さんの後ろ姿が鏡に写る。鏡はリバーシブルになっており、裏側にはライトが付いていて、START AGAINではひっくり返していた。ダンサーさんも神谷さんも一歩動きを間違うと台無しになるだろうから、かなり練習を重ねたのではないかなぁ。

一回捌け(だだだっとゲームみたいにダッシュするから面白かったw)軽快なドラムソロで旗を持ったカラーガード隊のお姉さん達が登場。このお姉さん達がとてもかわいい&かっこいい。一体何が始まるのか?どこから出てくるのか?とワクワクしているとポップアップから着替えた神谷さんが登場。そしてfull countが始まる!思わず「うわぁ!」と声が出てしまった。ハレライでやってないことを考えた時に、ハレノヒの曲はやるかもしれないと思っていたが、名もなき花か優しい風のどっちかだろうと予想していた。まさかfull countだとは。赤いチェックのシャツがかわいらしく幼いイメージの曲に合っている。サビでギターがワウワウしてて大変良い。ワウペダル踏む姿好きなのでついギターの方に釘付けに。続いてカラーガード隊を残したままDanger Heaven?。音源よりもかなりゆっくりである。センターステージで間奏を迎え、神谷さんが一本の旗を手にする。集まる視線と高まる期待の中、彼は華麗に旗を扱い、大きく投げ、見事にキャッチしたのであった!後のMCで、その時間は約30秒だと言っていたが、私にはとても長く思えた。見惚れていたのかもしれない。最後の「君にずっと笑顔でいてほしい僕だから」がこの日はとても響いて、うるっとした。For myselfの「君の幸せはいつだって僕が実現してあげる」も同じなのだが、この人はもしかしたら本当にこんな風に思っているのかもしれない、そしてそれを実現しようとしてくれているのだと胸がぎゅっとなる。
照明が少し暗くなり、「いつか遠い夜空を~」と歌い出した時の会場の歓声というか幸せが溢れ出たようなざわめきが印象的だった。この曲も予想はしていたが、いざ歌われると心臓に悪い。さっきの多幸感に満ちた空間からがらっと雰囲気が変わった。最後の歌い終わりまで一瞬も逃すまいと聴き入っているように感じた(キンブレは揺れているが)。神谷さんがステージへ戻ると、白い大きな幕が垂れ下がり、雪の結晶が舞う大きなお城が映し出された。お城のドアが開き、その位置に神谷さんが立っている。スノウフレイクワンダーランドだ。ドアぱかっだけでも結構面白かったのだが、途中から幕にでかでかとキラキラした…ええと、分かりやすく言うと冬のソナタさながら頬笑みをたたえた神谷さんが映され、吹き出してしまった。会場もざわ…ざわ…となっていたように思う。私は不真面目なので(また開き直る)初めて聴いたこともあり、冬ソナの印象しかない。後半から幕の向こう側の神谷さんも映像になった。

(たぶん)センターステージから登場し、Q.E.D~トロッコでYELL。私は不真面目なので(とにかく開き直る)YELLも初めて聴いたのだが、何を言っているのかも掛け合いも分からなくて焦った。いやぁ予習って大事ですね…。トロッコからピンポイントを指差して一本釣りする光景を面白く眺めた。アレされたら心臓止まるだろうなぁ。ステージに戻り、MCコーナーへ。「だらだらと喋りますんでご着席ください」と促される。内容はオープニングのCGアニメーションのこと、LIVE THEATERへの経緯など。CGアニメはとても著名な方がLINEスタンプを気に入って、特に依頼されたわけでもなく作ったことがキッカケだったそうな。正直どうやったらそんな方にLINEスタンプが目に留まるのか不思議すぎるが、深く追求せずに、どうやらめちゃくちゃすごいことらしい!くらいに留めておこう。動く猫耳ひろしかわいかったなぁ。2ndライブはちょうど一年前に「とりあえず箱押さえましたから」と唐突に告げられ、するかしないか、するならどうするのかとか悩んだ話。どういう流れですることになったのか思い出せない。大事なところなのに。「この人のゴールは一体どこだろう?」とそんなことを考えてしまっていた。何はともあれ前向きな気持ちでライブをすることになったのなら良かった。途中「ここがホームだからつい甘えてしまうんですよ」と言った。“みんなに喜んでもらうために”という想いが鉛になって、もはやファンが仮想敵になっているのではないかと実は思っていたのだが、私の考えすぎだったのかもしれない。しかし、ホームであってほしいという願望のようにも少しだけ聞こえた。

「ずっと喋ってるわけにもいかないので…」とMCコーナーが終わり、GRAVITATION…ここでかぁ!!と若干がくっとしてしまった。このタイミングはもったいない。くぅー。位置的にはAlways~がしっくりする気がするが、連続でラブソングはくどいか…いやでもなぁ…。これだけは曲の前後まで作り込んでほしかったなぁ。そこからHA-RE?GO!~SELFISH~イイカンジと続く。あれ、ここらへん記憶がない。HA-RE?GO!は意外だった。虹色蝶々ではセンターステージのリフターで高く高く上がる。この曲は取り急ぎの感想がすべてであり、この日のハイライトだ。

ある曲で足場が高く高く上がり、3階スタンドの私と同じくらいの目線になった。こっちに顔を向けた時ではなく、反対側に向けて歌う彼の背中とその向こうの綺麗な無数の光を見た時に「これを観るために来たのだなぁ」と思った。わたしが期待していた、過去の記事でも何度か言った「素晴らしい景色」だった。

なぜ紫じゃない色のキンブレが増えたんだ?と疑問だったが虹色蝶々だからとすぐに気付いた。間奏だったか、ミラーボールに色とりどりのレーザーが集まって回り始めたのが綺麗だった。「すげー怖かった!キラフェスの時は手すりが一周あったのに!」とこぼしていたが、見ていて怖さなどまったく感じなかった。神谷さんが内心では怖がりながら笑顔で踏ん張る姿をとても美しく思ってしまう、この場面だけではなくありとあらゆることに当てはまるのだろうなぁ。彼が戦う姿が、私は好きなのだ。

「最後の曲です!」\えー!やだー!!/「俺も終わんないのやだ!!」というやり取りに笑った。こんな風に返す人ははじめてだw素直で良い。終わらないと困るよね。「上手に歌えませんが、心を込めて歌います」とハレライでも聞いた言葉から、シアターへ。虹色蝶々を歌っている間に、足元にはレッドカーペットが伸びていた。歌い出し、途端に崩れる歌声に驚きビジョンを見ると、見たことないくらい顔を切なく歪ませる神谷さんがいた。もしかして泣いているのか?いや、そんなわけないか、分からない、汗かもしれない、私も視界がぼやけてよく見えない。
神谷さんの曲たちは前述したDanger Heaven?やFor myself、他には贅沢な時間など分かりやすくファンに向けられているなぁと常々思っていた。だが、ハレのち始まりの日だけは初めて聴いた時から歌詞が神谷さんに重なる。完璧じゃなくてもいい、翼のあいだ隠す傷も、からだや心に残っている哀しみの跡も、あなたが生きてきた証だから。これまでファンの前で涙を見せたことがあるのかないのか知らないが、きっと泣く姿を見せない人だと思っていた。ただ「初めて人前で溶かす涙」がこぼれるほど、彼の感情が揺さぶられる時がくるのなら、どんなに素晴らしいことなのだろう?そんなことを曲を聴くたびに考えていた。そしてこの日、シアターを歌う姿を見ながらまた同じように考えていた。別の曲を想うのも如何なものかと思うが、こればっかりはどうしようもない。もし、本当に泣いていたのなら、一体どんな気持ちだったのだろう。何の涙だったのだろう。
レッドカーペットを歩き、頭上に降り注ぐ花火の下を通り、ステージへ戻る。眩いライトに照らされながら彼の姿が消えた。ただただ、ぽかんとしてしまった。

アンコールはTシャツで登場。赤いハンカチ?スカーフ?を投げるとぴゅーっと天井まで飛んで行った。まだTheaterで歌ってない曲、影もまた真なり。とびっきり演出しやすそうな曲だが、一番シンプルだった。「みんなが呼んでるから!早く!って必死に着替えていたらスタッフに息を整えてください!と言われた」らしい。そんな人がいるんだ?!と驚いた。全体的な風潮としてアンコールは予定調和であるし、そこらへんのバンドマンはアンコール待ちの間に煙草2~3本吸ってるだろうから、早く出なきゃ!と焦る人がいるなんて考えもしなかった。まぁだから何だって話なのだが、とても印象的だったので。もっとどっしり構えてもいいのに、そうなれない謙虚さを持つ神谷さんが好きだ。続いて告知も。嬉しそうにリーディングライブについて喋る様子から、彼にとって気合いが入るイベントなのだろう。「本業だ」と胸張って言う仕事、観たい。メンバー紹介を経て、「最後の曲です、みなさんも一緒に歌ってください!GLOURIUS TME!」。再びトロッコでアリーナへ。私はもう参加者というより傍観者になっていて、お客さんに囲まれ、手を振り振られ、笑顔で向き合って歌う神谷さんがいる光景を観ていた。基本的にライブは1対nではなく1対1だと思っているのだが、この時ばっかりは会場と神谷さんの相思相愛感が空間に満ちていて、最高のエンドロールだった。なんというハッピーエンド!

ダンサーの方、バンドメンバーと横一列になり、生声で「ありがとうございました!」と叫んだ。綺麗に通る声で、私の耳にもはっきりと聞こえた。全方位に向けて頭を下げ、何回も何回もお礼を言って、端から端へ走って、投げキッスを飛ばしたり投げたりしながら去っていった。下手の袖へ走って捌けたのだが、暗いからか出口が分からなくて右往左往していたw普通ここでもう一回手くらい振ってもいいだろうに、振り返りもせずにそのままダッシュで走り去ったのがなんとも面白くて、神谷さんは大抵のことはそつなくこなすのに、ときどき変なところで抜けていてかわいいなぁと笑ったのがLIVE THEATER 1日目の最後だった。

 かなり作り込んだ世界観・演出だろうという予想はあっけなく裏切られ、昨年のハレライほどの派手さはなく、地に足がついていたライブだった。誤魔化さず、真っ直ぐ覗きこむように、ファンとの距離を縮めようとしていた気がする。自分で自分を引用しまくるという一人遊びの極みになってしまうが、リアルタイムで書いたこの気持ち以上のものはない。 私は不真面目で、すべてを追いかけているわけでもないし、この日を振り返るとあの場になんだか上手に馴染めなかったなぁと少しへこんだりもするが、それでもファンと名乗らせてください。

沢山の想いを一身に背負い、笑いながら戦う姿はとても美しく、その歌声は心に響いた。本当にどうもありがとう。あなたのファンで良かったです。